シューズデザインの多くは、スニーカー類ではなくて革製(価格が安めだと合皮製・ビニール製などにもなりますが…)のいわゆる靴になります、その方が売れるからです。学生まではスニーカーの方が多いかもしれませんが、社会人以上なら圧倒的に革靴です。購入頻度も革靴の方が高いです。家族や友人がどんなシューズをどの程度の割合で所有しているかを見れば分かると思います。
したがってスニーカー類はあまり多くないし考えることも必要ないなどと思わないでください。
機能がゆえ、材質や作り方が豊富で、かつ、イノベーション(革新)を繰り返して進化しているので見ておかないといけません。
つまり、スニーカーを見れば革靴のイノベーションのヒントはたくさんあります。
このページでは、歴史と実際のデザイン例と共に、シューズデザインはどんな風に考えやっていかなくてはならないかを書いています。
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エアマックス
初代エアマックスは1987年発売。識者によっては異論があるかと思うが、ビジブルエア(見えるエアバッグ)搭載で従来のマラソンシューズ(スニーカー)に無いソフトさを実現し、足に負担がかからないスニーカーと言うことだと認識していた。
上は、1989年頃GKにいた方が独立して事務所を構え、プーマの日本の販売会社から商品開発・デザインの仕事を受けていました。
私はメーカーを辞めてデザインの勉強をさせてもらいにその事務所に行っていましたが、その時に私がデザインした絵です。
数日で100~200個のデザインを描いたと覚えていますが、最後の方で新しい機能を入れ込んだ考えを出すときに描いたものです。
プーマディスクシステム
92年に登場、ディスクを回して四方の樹脂パーツにつながるピアノ線を締め、足にシューズをフィットさせる「未体験の装着感」というディスクシステム。“フィッティング戦争”と言われるようになった。
今見ても、色味も含めて子供ウケを狙ったのだろうか?と思うほど…だが、どう見えます?
自分のデザインが採用されなかったから言っているのではありません!(。-`ω´-)キッパリ!!
しかし結果的に“フィッティング戦争”とまで言われるほどの注目を得ました。突飛なデザインで機能がそのまま取り付けられているからこそだったのかもしれません。色も含めて子供たちがとても欲しくなる感じですね!子供たちにとっては自分だけが持っていない事などとても許されないので、泣いて親に懇願したでしょうから、きっと売れ行きは良かったのではないでしょうか!成功ですね。
ここがデザイナーとして歯がゆいところなのです。これから皆さんにもこんな思いをする時が来るでしょう。デザイナーは自分がデザインした物が売れるかどうかを客観的に見てわかるようにはなれないかもしれません。余裕があれば、マーケティングを勉強すると良いでしょう。
数年後に出された後のシリーズは、デザインがどんどん良くなっていました。
リーボックポンプフューリー
この他“フィッティング戦争”では、ReebokのPUMP FURY(ポンプフューリー)がありました。ポンプによって空気を入れてフィットさせるという物でした。10代20代の若者には、こっちの方が全然人気がありました。POPなストリート系デザインでこちらもまた成功しました。
アディダス
アディダスだけは、フィッティング戦争には参加せず=突飛なことはしないで、従来通りの固定客を大事にしようという路線にしたのでしょう。しかし、一時期人気も売り上げも落ち込みがひどかったです。今はまた巻き返しましたが、何かしら新しいことに挑戦はしないとこういうことになります。
クロックス
スニーカーではないですが「クロックス」の登場は衝撃的でした。なお「クロスライト™」と言う緩衝材を入れているのがすごいということでしたが、この表面に出ている発泡剤のみで形状が作られ、安定して歩行することが出来て、柔らかい素材のため速く削れて薄くなってしまいますが、それで良いとしているということが画期的でした。
当時の開発者・メーカー関係者は、なんだこれで良いんだと言う感覚だったでしょう!
なおクロックスは2002年の設立された会社です。そのころナイキではまだ2006年のエアマックス360に向けて開発中だったと思いますが、その後、どのスニーカーメーカーもクロックスの考え方をとりいれていくことになります。
なにも空気を履かなくても良い!空気を組み込むよりよっぽど軽い!!となったでしょう。
とはいえ、せっかく販売面で成功しているのだから、ブランド化に成功したのだからその後もエアーは販売され続けますが…
最近発売されるデザインを見ると、やっぱりエアマックスが主流でななくなってきているのがわかるでしょう。
フライイーズ
そんな歴史を見ながら、コロナ渦の今年8月末にNIKEから発売された、手を使わずにぬぎはき出来るスニーカー:フライイーズです。
サイトはこちら⇒https://www.nike.com/jp/flyease/go-flyease
ぬぐ時⇩
ぬいだ後⇩
片足はいた時⇩
このデザイン似てると思いませんか?
フィッティングの良さと履きやすさを兼ね備えることを目指したデザインです。上のフライイースのようにかかと部分が可動し、下のテープの機能も入っています。
ずっと前から考えていたんだぞ!すごいだろうと言いたいわけではありません。
よく言われることは、どんなに偉大な発明も同じ時に、この地球上で「3人は考えている」ということです。聞いたことありませんか?問題はそのあとなんです。
①つまり、近いことはだれでも考えられるのです。何が違うかと言うと、試作を作り、材料を選択し、トライ&エラーを繰り返し、完成を夢見て信じて、作っていくことです。
私には出来ませんでした。ではなぜ、私は出来なかったのでしょうか?
②まず、このプーマのデザインの時の私のポジションは、プーマの日本の販売会社のデザイン外注先のアシスタントに過ぎなかったのです。ポジションがものが言えるところでないと何も進みませんね!ぜひ、ものが言えるポジションに行ってください。就職時から、学校から近くに行けます。
上は1998年頃私が描いたデザインです。ザッカデザイン画コンペティションの前進の台東レザーグッズデザインコンテストに出して試作が作られ最終審査のファッションショーに出された作品です。⇒第32回 ザッカデザイン画コンペティションのためのアイデア|注目コンテスト①
この他フライイーズシリーズには、下のデザインもあります。
機能は少し違いがあり手を使わずには履けないデザインもありますが、総じてはきぬぎがすごく簡単です。
上2つは、プーマのディスクシステムの機能に似ていますが、すっきり洗練されたデザインですね!当時と違って今ならこのデザインですね!
③良い会社に入っても、会社によって上司によって、阻まれることもあります。例えば私が以前一緒に働いていた本田を出た人は、なぜ本田を辞めてしまったのかと言うところです。
1985年ころだったと思います。ホンダのデザインがひどくて売り上げが低迷していた時期がありました。そのころ多くのデザイナーが本田を去ったそうですが、最終デザイン決定者がセンスが悪かったとのことです。
この場合は、デザインセンスだけでなく、売れるかどうかのマーケティングセンスもひどかったのでしょう。
この時は10年近かったでしょうか?潜んで新しいスキルを付けたり勉強するなどして、力を蓄えていられるかどうかですね!待てるかどうか?デザイナーにはそんなときもあります。
私の場合、デザインコンテストで試作してくれた企業からお誘いはありましたが、話を聞いていると、その社長の求めているのは、コンテストのデザインだったり、私のデザイン力でないようで、話が合いそうもなかったので丁重にお断りしました。
まとめ
主に革で作るシューズメーカーよりも、色んな素材を使って作れるからスニーカーなどを作っているメーカーに行くのが最も色々とアイデアを実現できるでしょう。
だからこそ人気だと思いますし、なかなか会社に入ると試作などを作るよりも、目の前の商品のデザインなどをすることばかりになってしまうでしょう。
常に少しでも時間を作って、自分で材料を調達し、試作を作らないとだめです。
どんな商品を作る場合も同じで、数年かけて自分一人でいくつも作って一つの商品を作り出すような、覚悟で進めないとならないと思いますが、それが出来るかどうかです。フライイーズのページの動画を日本語訳で見てください。⇒フライイーズ
なおスニーカーの世界は、日本で見ている物が全てと思うと大きな勘違いがあります。日本では、イギリスなどヨーロッパのデザインのほとんどを見ることが出来ないです。
状況が改善されたら、ぜひ香港に行ってみてください。尖沙咀(Tsim Sha Tsui)から、Nathan Rdを佐敦(Jordan)辺りまで歩きながらウインドウショッピングするだけで、驚くほどたくさんの面白いデザインを見ることが出来ます。
また、日々の外回り営業に耐えるように造る男性用だったり、スポーツ用にとても多くの機能を考えないとならないスニーカーと違って、女性用のシューズは、もっともっといろんなことが出来ます。思いつくままにデザインできるでしょう。
総じて言えることは、あらゆる素材について、例えばゴムにはどんなものがあるか?何本でどの位の強さなのかなども含めて、あらゆる材料とその特性に興味をって色々な物を見ることです。
それが、このような開発・新デザインの発想に役立ちます。
香港に行けない間は、NETで見るしかないかもしれませんが…
こんなところとか➡balenciaga
こちらの画像素材サイトに「靴」と入れて検索してみてください。香港ほどではないけどアイデアが溢れます。
靴を一人で全部作る職人の工房も増えているようです。それも手かもしれません。まだまだシューズの世界は面白いと思いますよ!
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